「日本語教育能力試験ってどんな試験?」「合格するメリットは?」「出題内容や対策は?」など、日本語教師初心者の方にも分かりやすく日本語教育能力試験についてご紹介します。
日本語教育能力検定試験とは
日本語教育能力検定試験の目的
日本語教育能力検定試験は、「公益財団法人 日本国際教育支援協会」が実施しています。
これから日本語教師になりたいという人や、すでに日本語教師として働いている人を対象にした試験です。
日本語教育に携わるにあたって必要な基礎的な能力や知識が身についているかどうかを検定することを目的としています。
この検定試験の合格は、日本語教育業界における一つのステータスの獲得であるばかりでなく、日本語教師としての働き口も見つけやすくなります。
- 大学で日本語教育の主専攻または副専攻を修了する
- 日本語教師養成講座420時間を修了する
- 日本語教育能力検定試験に合格する
多くの日本語教師求人の応募条件では、いずれか一つに該当していることが、必須となっています。
日本語教育能力検定試験は、国家資格や公的試験ではありませんが、日本語教育業界では誰もが知る中心的な役割を担う試験です。
日本語教育能力試験の受験資格
だれでも受験可能
日本語教育能力検定試験は、受験資格の制約がなく、だれでも受験することができます。
日本語教育能力検定試験の試験会場
全国7都市で開催
- 札幌
- 仙台
- 東京
- 名古屋
- 大阪
- 広島
- 福岡
日本語教育能力検定試験の日時
試験は年1回
試験は例年10月の中旬から下旬に行われています。
令和2年度(2020年) 10月25 日(日)
9:00~16:40
日本語教育能力検定試験の受験費用
10,800 円(税込)
日本語教育能力検定試験の出願方法
願書申込み受付期間
6月下旬~8月上旬頃まで
出願方法
1.願書(出願書類付き受験案内)を、購入します。(407円)
2.受験案内に専用の振込用紙(払込取扱票 振替払込受付証明書付)が同封されているので、その用紙を持って、郵便局(ゆうちょ銀行)で支払います。
3.受験願書といっしょに、振り込みを済ませた振込用紙の右端「振替払込受付証明書」を専用の「出願書類提出用封筒」に入れて出願期間内に特定記録郵便で郵送提出します。
・願書に貼る証明写真が必要(合格証書にも印刷される)
・名前、住所、職業や希望受験地区などの基本的な情報と簡単なアンケートの記入
(アンケート内容)
- 検定試験受験回数は?初めて/二回目/三回目/四回目以上
- 日本語教育に関する学習暦は?大学院(日本語教育専攻)/大学・短大(日本語教育専攻)/大学・短大(その他)/長期養成講座/短期養成講座/通信講座/独学/特になし
- ボランティアで日本語を教えていますか? はい/いいえ
- 日本語教授歴は? 1~3年/4~6年/7~9年/10年以上/なし
海外からの出願は?
日本語教育能力検定試験の願書(出願書類付き受験案内)は日本国内のみの販売となっています。
そして、出願手続きは、専用の用紙を使って払い込んだ上で、出願書類を郵便局の特定記録郵便にて送付することになっています。
そのため、海外に在住している場合は、受験料の払い込みから出願書類の送付まで、日本にいる家族や知人に代行してもらう必要があります。
※受験票、合格結果通知、合格証書の送付も日本国内の住所のみになっています。
日本語教育能力検定試験の合格基準・結果通知
合格基準
年によって多少異なりますが、240点満点中、おおよそ65~71%(163~168点)以上の得点で合格となるケースが多いです。
合格発表・通知
令和2年度の合否結果通知の発送は、令和2年 12 月 25 日(金)です。
合格した場合には、特定記録郵便にてA4大の封筒で合格証書が送られてきます。
日本語教育能力検定試験の内容
試験の構成
出題範囲と配点について
試験の構成
試験I | 90分 | 100点 | 日本語教育の実践につながる基礎的な知識を測定する。 |
試験II | 30分 | 40点 | 基礎的な知識および基礎的な問題解決能力について、音声を媒体とした出題形式で測定する。 |
試験III | 120分 | 100点 | 熟練した日本語教員の有する現場対応能力につながる基礎的な問題解決能力を測定する。 |
【参照:日本語教育能力検定試験の実施要項】
- 総合点:240点満点
- 問題形式:基本的にはマークシート(一部記述式問題あり)
- 時間:問題を解く時間の総計は4時間。朝から昼食を挟み、夕方まで。
試験Ⅰは90分間で午前中に行われます。昼食後に試験Ⅱ30分間と試験Ⅲ120分間が実施されます。
出題範囲・内容
以下、5分野が出題範囲となっています。
- 社会・文化・地域
- 言語と社会
- 言語と心理
- 言語と教育
- 言語一般
試験範囲の内容
以下、5分野の詳細です。
太字は「基礎項目」で、優先的に出題されます。
1 社会・文化・地域 |
|
世界と日本 | 諸外国・地域と日本 |
日本の社会と文化 | |
異文化接触 | 異文化適応・調整 |
人口の移動(移民・難民政策を含む) | |
児童生徒の文化間移動 | |
日本語教育の歴史と現状 | 日本語教育史 |
日本語教育と国語教育 | |
言語政策 | |
日本語の教育哲学 | |
日本語及び日本語教育に関する試験 | |
日本語教育事情:世界の各地域,日本の各地域 | |
日本語教員の資質・能力 |
2.言語と社会 | |
言語と社会の関係 | 社会文化能力 |
言語接触・言語管理 | |
言語政策 | |
各国の教育制度・教育事情 | |
社会言語学・言語社会学 | |
言語使用と社会 | 言語変種 |
待遇・敬意表現 | |
言語・非言語行動 | |
コミュニケーション学 | |
異文化コミュニケーションと社会 | 言語・文化相対主義 |
二言語併用主義(バイリンガリズム(政策) | |
多文化・多言語主義 | |
アイデンティティ(自己確認,帰属意識) |
3.言語と心理 | |
言語理解の過程 | 予測・推測能力 |
談話理解 | |
記憶・視点 | |
心理言語学・認知言語学 | |
言語習得・発達 | 習得過程(第一言語・第二言語) |
中間言語 | |
二言語併用主義(バイリンガリズム) | |
ストラテジー(学習方略) | |
学習者タイプ | |
異文化理解と心理 | 社会的技能・技術(スキル) |
異文化受容・適応 | |
日本語教育・学習の情意的側面 | |
日本語教育と障害者教育 |
4.言語と教育 |
|
言語教育法・実技(実習) | 実践的知識・能力 |
コースデザイン(教育課程編成),カリキュラム編成 | |
教授法 | |
評価法 | |
教育実技(実習) | |
自己点検・授業分析能力 | |
誤用分析 | |
教材分析・開発 | |
教室・言語環境の設定 | |
目的・対象別日本語教育法 | |
異文化間教育・コミュニケーション教育 | 異文化間教育・多文化教育 |
国際・比較教育 | |
国際理解教育 | |
コミュニケーション教育 | |
異文化受容訓練 | |
言語間対照 | |
学習者の権利 | |
言語教育と情報 | データ処理 |
メディア/情報技術活用能力(リテラシー) | |
学習支援・促進者(ファシリテータ)の養成 | |
教材開発・選択 | |
知的所有権問題 | |
教育工学 |
5.言語一般 | |
言語の構造一般 | 言語の類型 |
世界の諸言語 | |
一般言語学・日本語学・対照言語学 | |
理論言語学・応用言語学 | |
日本語の構造 | 日本語の構造 |
音声・音韻体系 | |
形態・語彙体系 | |
文法体系 | |
意味体系 | |
語用論的規範 | |
文字と表記 | |
日本語史 | |
コミュニケーション能力 | 受容・理解能力 |
言語運用能力 | |
社会文化能力 | |
対人関係能力 | |
異文化調整能力 |
合格率と傾向
日本語教育能力検定試験の合格率は、例年20%~30%程度を推移しています。
全科目受験者 | 合格者 | 合格率 | |
令和元年度 | 9,380 | 2,659 | 28.0 |
平成30年度 | 6,801 | 1,937 | 28.4 |
平成29年度 | 5,733 | 1,463 | 25.4 |
平成28年度 | 4,907 | 1,231 | 25.1 |
平成27年度 | 4,727 | 1,086 | 23.0 |
平成26年度 | 4,362 | 1,027 | 23.5 |
平成25年度 | 4,374 | 1,001 | 22.9 |
平成24年度 | 4,798 | 1,109 | 23.1 |
平成23年度 | 5,732 | 1,527 | 26.6 |
平成22年度 | 5,584 | 1,197 | 21.4 |
平成21年度 | 5,183 | 1,215 | 23.4 |
平成20年度 | 4,740 | 1,020 | 21.5 |
平成19年度 | 4,772 | 981 | 20.6 |
近年の傾向は、受験者が増えていることや、合格率が25%を超えていることが挙げられます。
検定試験を受験するのはどんな人?
日本語能力検定試験の過去のアンケート結果を見ると、20代、30代の人が転職のために日本語教師を目指す人や、50代以上で退職後の新たな人生を見据えて受験するする人の割合が多いと推測されます。
若い世代の生きがいを求めての転職や主婦層の女性ワークや副業で注目が集まっているようです。
そして日本語教師の仕事は社会人経験が生かされることから、年齢が高い世代にも人気があります。
実際に国内・海外問わず年齢の高い世代の人たちが日本語教師として新たな職を獲得し、生き生きと活躍しているのは珍しいことではありません。
しかし、働いていたり海外に住んでいる場合、なかなか日本語教師になるために大学に進学することや日本語教師養成講座420時間講座に通学することが難しいので、日本語教育能力検定試験を受験して日本語教師への道を目指す人も多いようです。
受験生の大半は、会社員・公務員・自営業、主婦/主夫、などの人たちですが、退職者や非常勤の日本語教師も多く受験しています。
ここ最近の受験者の年齢層の特徴として、40代や50代、さらに60才以上の受験者が増加傾向にあります。
受験者の男女比は、おおよそ3:7(男:女)となっています。
日本語教育能力検定試験の試験対策
通信講座で学ぶ
日本語教育能力検定試験は、出題範囲がとても広く難易度も高い試験なので、対策はしっかり取る必要がります。
通信講座なら、日本語教育に携わるプロフェッショナルな教育者たちが合格までの対策、教材を提示してくれるので、あとは自分の努力次第で合格することができるでしょう。
▽おすすめの「通信講座」を比較してご紹介しています。
養成講座への通学
ヒューマンアカデミー通信講座「たのまな」養成講座420時間に通いながら、総合的に学習をすすめていき、日本語教育能力検定試験に向けて足りないところや苦手なところを、さらに通信講座や市販の教材などで補う方法もあります。
費用はかかりますが、この方法だと、もし日本語教育能力検定試験に合格できなくても、日本語養成講座420時間を修了できるので日本語教師としての仕事が無事にスタートできるでしょう。
ヒューマンアカデミーなら「420時間カリキュラム」と同時に、日本語教育能力検定試験の合格も目指せる通信講座のセットコースがあるので、余裕がある方は同時に受講すると良いと思います。
▽通信講座のセットコースはヒューマンアカデミーでチェック
日本語教育能力検定試験のまとめ
日本語教育能力検定試験は、試験ⅠからⅢまでの3部構成で1日がかりで実施されます。
出題範囲は広く、合格率は例年30%以下と低率です。
試験は1年に1回しかないので、1年に1度のチャンスを逃さないようにしっかりと試験の傾向をつかみ、対策を講じて本番に臨むようにしましょう!
▽「日本語教育能力検定試験」対策のおすすめ通信講座の比較についてはこちらから!
▽他の「日本語教育能力検定試験」の通信講座についてはこちら!